過去たちの春夏秋冬/水鳴ハヤテ
 
 二首

霧雨と呼ぶにはひどく傘が濡れる露しとしと鳴る由良三丁目

寂しげな瞳の色に似る雨の香に入り混じるゆうげの笑い



  熱帯夜

熱帯夜花に例えば朱紅色のようなものですこの感傷ゆえの

熱帯夜窓を開ければ重苦し空よりさえも垣間見えぬ月

熱帯夜君を思えば短夜もとわのしじまと思うだろうか



  七夕

探索の五色眩しき食堂で翻りたる人生の青

田舎でも星は見えなくなりました。夜明けのガスも温暖化する

ここいらで腰をおろして寂しさと銀河の流れを聞き分けている



  滴る雨

透明な音が夜闇をしめらせて水無月の色花染め
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