群像/飯沼ふるい
 

太陽は赤い、などと誰が決めた。とは言うものの、しかし、しかし例えばだ。僕が赤いと思って見ている物が、僕が青いと思って見ている物の色で見える人に、焚き火や夕焼けの色、あれが暖色といいます。
と、教えたとする。
「ほう、あの色が」
彼が夏の黄昏を情感いっぱい込めて描いたとき、僕は彼をひっぱたいてしまうかもしれない。
てめぇの血は何色だと。お前それ暖かく見えんのかと。ひねくれるんじゃないよ。夕焼っていうのはこういう色だ。いや、違う……。
と、謎の押し問答が始まるのではないか。彼の暖かさとはいったいどうなのか。絵の話が論理学だか哲学だかの話になってしまうからもうやめる。
とにかく僕は諦めて
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