群像/飯沼ふるい
 
がら、彼の友人に王手を掛けることでしょう。
また、因数分解の初歩に戸惑う岐阜の中学生の女の子が、先生と目を合わせないよう不自然に目を泳がせることでしょう。





「青や緑は人に寒さを感じさせる、寒色と呼ばれる色です。赤や黄は逆に、暖かみを感じさせます。これを暖色といいます」
と、いつか図工の時間に先生が教えてくれた。新しく僕に与えられた言葉はそっくりそのまま教科書に印字されている。
青い水彩絵の具をなんとか絞り出す。弱ったなまこみたいな寒色が小汚いパレットにぽてりと落ちる。
ひねくれはじめていた当時の僕はそれで暖かい太陽を描こうとしたのだが、どうもうまくいかなかった。

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