酩酊の夜/竹森
 
、遠ざかっていく。

「太鼓は小気味好く叩くもので・・・人肌は優しく撫でるもので・・・酩酊、そう、酩酊だけが、僕の唯一の感情で・・・」

あいこのじゃんけんを延々と向かい合って続けている信号機には、こちらも、もう構わない。
空も夜、地上も夜、ならばきっと地中も夜だろう。などという詭弁によって生じた僕は、この夜が明けた時、もう生きてはいないから。

「魔法使いがシンデレラに割れ易いガラスの靴を履かせた真の意図は、がさつな物腰を抑えつけて、無理やりに上品さを引き出す為だったんだってね」

ラベルを剥がして中身を排水溝に流したペットボトルに、手帳の一枚を破り取り、『自殺だなんて・・・。
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