酩酊の夜/竹森
 
うか。
スニーカーは絶対に歩き出さないから、もしも夜がそれを履いたのならば、束の間の静止、まるで、星座の様に隠蔽された動作の静止を得られるはずだから。

スニーカーを蹴り飛ばす人影は、依然、どこにも見当たらない。

地上は深海へと変貌し、全ての固形物がその輪郭を喪失していく。遠近を喪失した星月の光る天井に、電灯も等しく加わっていく。影が底無しの沼となり、夜空を遠ざけていく。夜空と海中とその下の地殻が織り成している筈の群青のグラデーションは、いつ感じても絶品。車道の黄色い光線と平行を描く電線に、漏電は青く、短く―――

―――酩酊。振動を続ける分子の群れをすり抜けて得られた軌跡を、唇を
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