涙/葉leaf
つい涙が出てしまうのは、思い出が夕立のように降って来たとき。思い出が大地を少しずつ削り、大地の裂け目からやがて泉を探り当ててしまうとき。孤独の泉、傷心の泉、夕立は私ですら忘れていたような泉をつぶさに刺し貫くので、そこから終わることのない痛みが溢れ出してしまう。裂け目から湧き出る涸れることのない痛みの泉は、やがて大河となって私の裡を流れ、その一滴が目の渦から零れる。
つい涙が出てしまうのは、ひとの好意が私の心の器で汲みつくせなかったとき。私が受け止めることのできる閾値や壁を超えて好意が流れ込んできたとき、私は好意にずぶぬれになり、摂取してもなお余りある好意をあらゆるものに変換していこう
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