遠さについて/葉leaf
職を得て社会的地位を得て人の輪の中で働いている。人生の終焉などという隔絶した地点から自然と帰還し、愛無き沙漠などという最果てからも無事帰還した。今思えば、それらの遠さの本質は故郷喪失であった。私は居るべき故郷を失い、青春の一時期、社会的あるいは実存的に寂しい異郷へと迷い込んでしまったのだ。私は今では故郷に舞い戻って来て、人生は再び始まり、人との愛の連鎖に組み込まれた。だがときたまフラッシュバックのように、かつての遠さが蘇ることがある。通勤しながら、仕事をしながら、ふと、とてつもない孤独感、愛の欠乏に襲われるのだ。そのとき私は分からなくなる。私にとって、実は青春こそが故郷だったのではないだろうか。人
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