元日の夜に/草野大悟2
 
ていたのだが、ここは一番、家長としての威厳を示さなければならない。
「はあー、そう仰いましてもですねえ」
 田中が間延びした顔を、さらに間延びさせて、間延びした声を出す。
「洋太郎さん、私たちに、なーんか懐かしさとか温かさとか感じません?」
 長髪のひょろり男が訊ねた。
 一瞬、ドキッと胸が鳴った。こいつらは、人の心の中が読めるのか? そう思った。
「今、こいつら心の中が読めるのか? って思ったでしょう?」
 体も髪の毛も薄い小さな男が、目を細めて私を見つめた。
 今度はゾクッと全身が粟立った。心の中でなにも思わないようにしなければ、胸の内を全部読み取られてしまう。そんな私の考えを
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