元日の夜に/草野大悟2
のお猪口に注いでいた。男は、一瞬だけ驚いたような顔をしたが「あ、ありがとうございます」と言うが早いか、獺祭を一気に飲み干したのだった。
リビングのテレビは、相変わらずお笑い番組を続けている。ツブラもテルマも夢中で見て、笑い転げている。
香織と亜紀は、男三人が入って来たときに、多少の興味を示したものの、今は、玩具に飽きた子供のように、お互いの思い出話に花を咲かせている。
三人の相手をしているのは、もっぱら私と美智子の二人で、時々、龍兵と修三が加わる。
「ところで、田中さん。あなた達、なんで家に来たとね?」
私も酔いが回ってきて、彼らがなぜ家に来たのかなど、どうでも良くなってい
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