元日の夜に/草野大悟2
 

「そうです。僕も同じ様なもんです」
 一番若い、ひょろりとした長髪の男がため息交じりに追随した。
「まあまあ二人とも、そんな話を洋太郎さんご一家にしても迷惑されるだろう。それは、組織の問題として、今後検討してゆくことにしよう。それでいいね」
 田中が念を押すと、二人は黙って頷いた。
 私は、その時、またあの懐かしい温かさに包まれていた。田中は、私の姓ではなく、名を呼んだ、洋太郎と。どうして彼が私の名を知っているのか、本来なら不思議に思って彼を問い詰めるはずだ。しかし、私は、そうしなかった。それどころか私は、「おおごつですねぇ。ま、ま、一杯どうぞ」と、獺祭を体も髪の毛も薄い小さな男のお
[次のページ]
戻る   Point(0)