カッコーの家/島中 充
みそかそばのテンプラをひっくり返しながら
正月を刑務所でくらす金物屋金蔵を箸で摘まんでいる
名字は金物屋 名前は親の手抜きの金蔵
店の名前 これも手抜きの金ちゃんうどん
夫婦で軽トラのうどん屋台だった
だしが旨いので 真夜中私はよく食べに行った
道端で立小便をして てんぷらうどんをつくった
わたしがうまいというと
お客さん てんぷらうどんのテンプラは世の中と同じよ
表と裏があって エビの見える方がタテマエよ
哲学者になった
赤子を背負って手伝っていた奥さん
ひとまわりはなれている若い奥さん
巣を持たないカッコーだった
銭湯に行ってくると言って そのまま
洗面器
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