晩夏だったはず/飯沼ふるい
 
握りしめている

二両ばかりの列車を見送り
踏切を渡る男の哀しい背中を見送り
あの野っ原の方を振り返る

するとどういう訳か
さっきまでの赤や朱の彩りはすっかり褪せて
白い陰や黒い陽射しの入り混じる
無声映画のような風景になっている

そうなると
薄暗い雲から
綿みたいな雪が降らないといけない
冷たいにおいが
もうそこらに満ちている
町は黙祷をはじめ
唱う子らの声も
降りしきる雪に紛れ
九月の暮れに落ちた影が
乾いた雪に埋もれていく
そういう風に書き換えた

そろそろ終わりにしたいのに
終わりようのない雪は降り続いている
そもそも終わりとはなんだろ
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