晩夏だったはず/飯沼ふるい
だろか
散歩の道すがら
野っ原を眺めるたびに考えた
このちっぽけな野っ原は人を欺く為にあって
本当にそこにあるのは荒涼たる原野ではないかとも考えた
考えているうちに
あれははないちもんめじゃなくて
かごめかごめだと気がついた
一つの正しいことに触れた途端
野っ原は真っ白に塗りつぶされていく
僕が見たもの
僕が聞いたもの
それら一切は印象からも脱皮して
このように
白々しい言葉と果てていく
「かごめかごめ
かごのなかのとりは
いついつでやる」
もう何も見えないし
何も聞こえない
明日になれば野っ原に
まっさらな雪のかむった墓石が並ぶ
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