晩夏だったはず/飯沼ふるい
てその日見ていたものは
晩夏の景色のはずだった
九月の暮れの小さな遊び場
夕暮れに染まる
子供らの声が
とろとろと延びる影に溶けていく
なんてことを書いていると
「三番線に
列車が参ります
危ないので
黄色い線より
下がって
お待ちください」
そんなアナウンスが
無人の駅舎の方から聞こえてきて
近くの踏切で
乳母車をおす男が寂しそうに立っているのが見えてくる
男は赤子の寝顔を覗き
このまま乳母車を踏切に投げ込んでしまおうか思案する
赤子を供物に捧げよう
それが馬鹿げた妄想で
彼だって赤子が真実愛しいのだから
ずっとハンドルを握り
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