夕陽のように温かい物語 三篇/るるりら
 

かでしろい その餅のような物は
一年間 抽斗の中におさめられたまま生き続けていて
新年にだけ 家の玄関近くに飾られる
ひとびとは 餅のように ふくよかに笑い
すべてのひとが 善人にみえる

かなしみの国から 逃げてきた人も
店主が茶を沸かし 餅のように笑う
つまらないことから逃げ出してきた旅人も
店主は茶を沸かすと 餅ろん笑う

正月が終わると 餅のようなものは
すっかり緑色の丸い生き物となっていて
しろいと感じてさせていたのは 光だったのだと
毎年のことながら 店主は思い出す

店主は 硝子の容器に
わずかに光る緑色の餅のような物を終
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