幸せな国の王様(だーれも知らないシリーズ3)/森川美咲
 
法律もない平穏を
信じられなかった

人を信じられない男は
ただ冷たい顔をして
黙って国を見回していた
人々はそんな男も
温かく迎え入れた

そしてある日突然
男は叫んだ
みんな平等なんて嘘っぱちだ
何でもお前らの好き勝手
俺の思いはどこにある

お前らと指差された
ある人は怒って言った
お前が黙っているから悪いのだと

しかしまた多くの人は戸惑った
黙っていたのは男だけではなかったから
みんな平等みんな幸せ
そんな理想が急に色褪せて見えた

幸せだった国は混乱し
統治する王と
守るべき法律を求めた

人々は叫んだ男を王に選んだ
もちろん反
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