立ち止まる子供/まーつん
 
残された少年が

 一本の樹を
 見上げている

 静かに立ち尽くし
 動かない生き物
 地に根付いた老木

 その声は小さく
 空気や、鼓膜を介さずに
 幼い心を直接、震わせてきた

 樹は語っていた
 経巡る季節について

 移り変わる星座で飾られた
 夜空の暗い天井が
 オルゴールの円盤の様に
 回ってゆく姿について

 己が体に宿る
 虫けらたちの
 営みについて

 根付き、育ち、実り
 与える、という
 行為について

 静かな泉に
 小石を投げるように
 樹の発するイメージが
 脳裏に波紋となって広がり

 魅せられ
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