陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
り分かれる料理も珍しい、と食した人たちから評され、それもまたひとつのこの料理の魅力となっている。
太郎は、下宿でもしょっちゅう『Nちゃん』を作って、ハフハフ言いながら食っていた。
一応研究者の卵としての研究心を発揮して、彼なりのバリエーションレシピもいくつか作っており、その中でも陽子が一番喜びそうな『激辛パンチNちゃん』を今日は精魂込めて作り、飲み物はラッシーにしよう、そう決めていた。
ホエーブスの青白い炎が、コッヘルの中の具材を煮込んでゆく。いい匂いがしてくる。側で眺めていた陽子が、
「なんか、おいしそうだね、ビールなんかもあったら最高だね」
ご機嫌で言う。
「ビール、ありま
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)