空洞/飯沼ふるい
(あるいはわたくしの隠喩かしらん
遠雷が遠くで鳴っている
カレンダーの新しい一面に
鯨幕が浮かびあがっては消える
これはいったい
どれほどの自我だろう
張りつめた動脈の遡上が
途絶えるまで続ける
口吻
春の色彩に包まれた
死期の味がする
唾
あなたであるものを通してもなお
存在の密度が
ほろほろと
崩れていく
その感じ
それだけが
わたくしということを
強く訴える
これはいったい
どれほどの自我だろう
あなたもまた中指から流線型に形を崩し
気流に溶けはじめる
もとより気流だったのかもしれない
わたくしがいまここで空洞としてある
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