空洞/飯沼ふるい
 
あるように
とすれば
もう誰もここにいやしない
わたくしとか、あなたとか、
そのような形骸を掘りこんだ
覚えていない日々の連なりが
空洞に包まれて
延長された命日だけが
過呼吸気味に息吹いている
百年の孤独とはよくいったものだと思う
これが
収斂していくということかと思う
先日
酔いすぎてもどした
消化途中の言葉尻が
まだ
黒ずんだ上がり框に
飛び散っている
そのまま
なにも残さず
揮発してしまえばいい

雨音は強く
そのなかに
向かいの棟を歩く誰かの足音が紛れていた
閃光は強く
そのなかに
わたくしのうしなはれた影が紛れていた
けれどあな
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