空洞/飯沼ふるい
わたくしの
(わたくしの?
なかから
(なかから?
先程までの
不快な言葉の淀みが抜けきったのだ
沈黙の涼しい時間が代わりにあった
そして
あなたは
いずれこの部屋へ帰ってくる
いつからの付き合いだろう
あなたは
思春期の盛りの夏
部活からの帰路
自転車に轢かれ
側溝の蓋に頭を強く打った
わたくしの
記憶を言った
それから少し経ち
玄関扉が開く
ぬるい気流が
生ごみの匂いを散らす
(あなたとはわたくしの妄想かしらん
あなたがある
わたくしということが見えない
あなたが見るのは
空洞、
まるで惨劇のように
静かな部屋
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