空洞/飯沼ふるい
 
曇ったシンクの隅で
ひっそりと呼吸する
酸えた匂いは
輪郭の定かでない暗闇を
黴のように
あちこちへ撒いているが
あすこに落ちている日付の方角から
この部屋へやってきた
わたくしには

それに気づくや否や
目の前に
空洞が、空洞という存在があった
見えない、という大きなものが
ぽっかりと、認知された

 (これは虚無感の隠喩かしらん

言葉の滓はなおも
ひくひくと身悶えているが
しかし
わたくしはこの部屋で一人

ゆっくりとこちらへ歩み寄る空洞
わたくしの体は
身じろぎもせずに
捕食される

部屋が
一段と静まり返った
のではなく
わた
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