小屋/草野大悟2
かった。
僕を好きになってくれる女の子など、もちろんいなかった。それで、昼休みには「ウサギ小屋」に行ってウサギと話をしていた。
ウサギは白ウサギばかり五羽いたが、その中でも一番小さくて餌もなかなか摂れないウサギが、僕によくなついていた。
僕はそのウサギにシロという名前をつけ、他のウサギが餌を食べている周りで、餌にありつけずにうろうろしているそいつに、みんなが餌を食い終わった後で、こっそり餌をやっていた。そうしないとシロは永遠に餌にありつけなかった。シロの目は、いつも濃いルビー色に輝き、濡れていた。
一坪ほどの広さと二メートルほどの高さの「ウサギ小屋」は、僕の聖域だった。鍵を僕が
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