小屋/草野大悟2
旨そうに食べながら焼酎を飲んで
「文人、旨いぞ。男はな、肉をたくさん食って力をつけて、偉くならなくちゃならん。大きくならなくちゃならん。いいかぁ、食え、食え、旨いぞ」
そう何度も僕にウサギの肉を勧めた。そういう父は、小柄な母より小さかった。
僕は、そのころ中学校の生物クラブに入っていて、毎日の餌やりが大変だ、という理由で希望者のいなかった白ウサギの世話を担当していた。だから、愛らしい雪のような生き物の肉を食べることなどとてもできず、やっと口に含んで食べたふりをし、父と母に見つからないように、そっとティッシュにくるんでポケットに隠し、食事の後で捨てていた。
僕には、友だちなどいなかっ
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