小屋/草野大悟2
 
れたことなど一度もなかったから、すっかり舞い上がってしまって
「えっ……あっ、あ……」
と、言葉にならない音を発するだけで精一杯だった。
「ね、見せてくれる?。陽子、ウサギ大好きなんだ」
彼女は、僕を見つめて微笑みながらまた同じことを言った。
「う、うん……」
やっと返事ができた。
「よかったぁ、行こ」
「う、う、うん……」
「はやく、行こうよ。陽子ね、今日、ほら、ウサギにやろうと思って人参とかセロリとか持ってきたんだ。あげていいよね?」
「う、う……」
僕がしどろもどろになっていると、彼女は、突然、はじけるように笑い出した。
「? ……」
「中村くん、う
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