山小屋の夜/蒲生万寿
私は矮小な自分から離れ
想像力を使いながら
星と星の間を渡ってみた
天と地の狭間に人が居て
それらを含む星となり
その星が銀河と集まり
宇宙が広がる
私個人の事象の一つ一つが
全く取るに足らぬものとなり
数学的な世界も
物理的な世界も
ましてや経済的な世界も
夢、幻と化して
移ろい、漂い、薄らいで消え去った
その後から包み込むように現れたものは
終わることのない安堵の世界
「安らぎ」だった
それはまた夜に瞬く星の一つ
昼に見る色取り取りの草花
硬い岩、黒い土、乾いた砂
明日になれば下山する私自身のものなのだ
言うなれば、最初から
この日、この夜
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