幸福不信/葉leaf
や踏破すべき高みなど経済の川を傾斜させる技術くらいだ。社会的地位と充実した毎日とやりがいのある仕事は、原石として存在していても削られるすべを知らないので輝くことはない。組織との適合と同僚との協調と上司との親和は水道をひねれば出てくるだけで、アルコールの香りと薬理を担うことは決してない。幸福は存在の条件を示すことすら阻まれている。私は不幸であるためなら手段を選ばない。そんな声が次々と声を呼び、次第に何もかも枯葉の寄せ集めとなる。迷ったとき都市の構造が厳然とした謎に思えるように、私は幸福の見慣れぬ街路に迷って、代わりに慣れ親しんだ故郷のどぶ川を眺めることで平らかな息になる。どうせ上司たちは私をいつ辞め
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