ぱくぱくぱく/栗山透
んでいた
ちいさな池では 鯉が泳いでいた
三人の子どもが鯉にえさをあげている
子どもたちはしきりに「ぱくぱくぱく」と鯉に話しかけている
あかりは最初はその子どもたちを見ていたのだ
ぱくぱく ぱくぱ く
あかりはその日、体調が悪いと言って仕事を休んでいた
きのうも同じことを言って休んだ
「胃がとても痛むのです」
上司は わかったよ お大事に と言った
あかりは上司にわりと気に入られている
どこの職場でも だいたい同じだ
白い鳥は まだ池の上をゆらゆらと 飛んでいる
もうさっきの子どもたちはどこかへ消えていた
あかりはベンチに腰を下ろし 文庫本を膝の上に置いた
木
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