ぱくぱくぱく/栗山透
 

木製の古いベンチは予想外に しくしくと冷える
そういえば昨日は雨が降っていたのだった でも仕方がない
 あかりは文庫本の頁をめくる
 視界に映っているのは
本と キャラメル色のカーディガンと
コーデュロイのショートパンツと 膝と 黒いコンバース
 物語では 雨の降るなか 女の子が歌をうたっている
彼女は上等な雨合羽を持っていて 雨が降ると傘を差さずに
雨の声を聴きに 外へとびだすのだ
家から少しばかり離れた場所で 両手を広げて目を閉じる
雨合羽のフードに雨が落ちる 広げた両手に雨が触れる
そして彼女は子どもにするような愛おしい気持ちで歌をうたうのだ
 あかりは子どもに歌を
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