扉/草野大悟2
となって見える。上弦の月がそう断言した。嘘つけ。見えるくらいならもうそれは、絵画となっていなければならない。有史以来、誰一人、夢の実像を描いた者はいない。描こうとした者は、その者自体が夢になっている。
「もうそろそろ行こうか?」
「うん、行こう」
「服を着なくちゃだめだよ」
「えー、着るの-」
「そうだよ。もちろん」
「なーんか、うざったい」
「それは分かるけど、とにかく着ようよ」
「私、このままがいいんだけどな」
「僕は、このままのきみがいいんだけど、だけどね、人の目っていうのがあるじゃない」
「人の目? 目? って?」
「だから目だよ。目。人の目」
「私も人だよ」
「
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)