扉/草野大悟2
「きみは、圧倒的にブランだよね」
「え? な〜に、それ」
「だから、きみはシロ」
「唐突過ぎて理解不能です」
「そう、唐突過ぎるよね」
「うん」
何も聞こえないということは、全てが聞こえるということだ。何も見えないということは、全てが知覚できると言うことだ。そういうことだ。耳や目や鼻や舌の宇宙は、それらを喪失した所から始まる。
淫雨。
これだけは確かなようだ。
そう言えばこの時期、紫陽花が咲いていた。
心を紫陽花に例えてうたった詩人もいた。腺病質のその詩人に、きみが魅せられたことは
当然のことだ。きみは淫雨を扱いかねて、いつも戸惑い顔をしていた。ぼくは、そんなきみをず
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