扉/草野大悟2
「あのね、……、これ誰にも言っちゃだめだよ。い〜い、分かった?」
「うん、誰にも言わない」
「約束する? 絶対?」
「約束する。絶対」
「あのね、私ね、私の頭ね、左後ろペッタンコなんだよ」
「は?」
「だから、ペッタンコ」
「胸?」
「ばか‼」
ふたりの言葉だけが行き交う空間。空気の存在。酸素だけでは生息できない。必要悪という媚薬も多くの人や多くの影は、あっ、それに多くの骨たちも、必要としている。
多分、マンガンノジュールが海底深く沈積し、メタンハイドレイトがさして注目もされずにくすぶっていた現実とはそういうことなのだろう。
「あのさぁ」
「な〜に」
「き
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)