扉/草野大悟2
?」
「だから、さっき言ったとこ」
「だから、どこ?」
「いやぁね、もう忘れたの」
「ああ、多分、そうかもしれない」
シュラフの外には、いろんな色や音が溢れてキラキラ輝いてる。そんなお伽噺を信じている人たちは、みんな鯨を愛している。
鯨は、それ自体が一つの大きなシュラフで、銀河系を幾つも包み込む包容力を保持している。だから、そこでは、色彩や音や匂いといった自己を主張する現象は必要とされない。
おそらく。
シュラフの中には、半月や土星の輪や木星の惑星や火星の悲鳴があったはずだ。それから、今は抹殺された冥王星も。……あった。
「ねえ」
「ん?」
「ねえ」
「ん?」
「あ
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