扉/草野大悟2
 
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 …………。
 苔色の地面には、若竹色の空模様が似合う。
 シャボン玉の表面を飾る虹は、白日の夕べ。見渡す限りの口の連続。落ちないように、気を張った、とたんに吸い込まれる。疲れ果てた雨粒に、ふるふるとうたれ、安らぎは溶けてゆく。
 優しいひと。ちらちら。優しいひと。ふわふわ。百日草。哀しみのひと。小糠雨。
 もう半分くらいは来ただろうか。空(くう)のただ中では、すべてが無意味だ。これまでに常識と思っていたものが非常識に変わったり、天使が悪魔になったり、クリオネの食事の瞬間を見たか? そんな感じ。ぐわっと、牙。
 いつか二人で積んだケルンは、今も、登山者たちを守っている。のだろうか
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