扉/草野大悟2
目にかかりたいものだ。
「ねぇ、さっきからなんか聞こえない? 泥鰌鍋とか蜜豆とか……」
「ううん。なんにも聞こえない。空耳じゃ?
それとも、君の内面の声? かも」
「ねぇ、みんなは聞こえなかった?」
「さあ、聞こえたような、聞こえないような……」
「どっちなの! 貴方たち色彩は、いつだって中途半端なんだから。もう! やっぱり、頼りはノワールとブランだけかしら?」
「おいら、どっちかっていうと、泥鰌鍋かも」
「だれ。今言ったの。泥鰌鍋かも、って言ったの。誰よ!」
…………。
「いいわ。みんなでそうやって知らんぷりしてれば。覚えてらっしゃい。あんたたちみんな透明にしてやるから!」
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