扉/草野大悟2
えないの?」
「見えないのって、君には見えるの?」
「誰だって見える。そう思ってたのに」
「僕には、扉なんか、ない」
「そーお、ないの?」
「うん」
緋鯉と梅雨寒がわずかに溶け合った世界は、やはり不条理という名が似合う。そう、「恐ろしいくらい」ピッタリ。似合う。
扉を開けたい。扉なんか、ない。相反する渦巻きだ。二人は。そうやって生きてきた。
生きて? 確かに生きてきた……はずだ。
炎天が待っていた。向日葵は君だ。じゃあ、あなたは? 僕? 僕はノミかな、たぶん……。炎天は、心の底のその人自身を焼き尽くす。のだ。炎天は、ハンカチーフを持たない。
ゴッホだって。炎天がハンカチ
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