扉/草野大悟2
 
役に立たないくらい。もう、どうとでもなれ。濡れてしまえ。交わってしまえ。 桜の花びらが、ふたりと色たちを包んで、雨が流れた。交わってしまえ。桜は、十二分に淫靡だった。
 薄雪の中でも交わる。寒い。特に風は応える。裸の心は何色なんだろう? 薄雪を握りしめながらふたりとも、色たちも、思った。 交わりは、おそらく、空の彼方の、さらに彼方から瞬きする間にやって来る。瞬く薄雪と帆風。春になり、また、夏になる。いつまで続く? 四季。
「ねぇ」
「ん」
「あのね。私ね。出て行きたい」
「出て行きたいって? どこへ?」
「あの扉、開けた世界」
「扉? 扉ってどこ?」
「えっ! あなたには見えな
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