扉/草野大悟2
て来た風が、海の語りかけるように。黄と赤紫と空色は、戸惑っている。どこに行けばいいのか、どう歩くべきかを彼らは誰からも教わらなかったし、教えを請うたこともなかった。今、この瞬間、彼らは、そのことを心の底から悔いている。
そのとき、涙の匂いがした。黄の涙。あるいは赤紫や空色の涙? いいやそうではない。
それは、ただ、涙だ。彼らを超越した涙なのだ。色彩ゆえの悲しみを彼らは悲しみ、涙に託そうとする直前に流れた、涙。
泣くがいい。心ゆくまで泣け。涙よ。
「ほら、ごらん、涙が泣いている」
「え? うそーお。泣くの? 涙」
「泣くんだよ。誰だって」
「あ、じゃ、ひゅるるんも泣く?」
「何よ
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