扉/草野大悟2
 
影までいないということは、もう、ほとんど、絶望色一色に塗りたくられている現実。蛍が道を辿っている。
朧月は、ふたりの言葉。
 眞実は、ふたつある。
 ひとつは、君の眞実。
 ひとつは、私の眞実。
 ふたつの眞実がひとつになったときに、産まれる。
 産まれるものの何かを、今は知らない。知らないことが、時として最上の解決策だったり、する。
「ねぇ」
「ん?」
「ノワールだね」
「そうだね。まったくのノワールだ」
「それもいいよね」
「うん。いい」
「ねぇ」
「ん?」
「私たちが歩いている所は、地面? 床?
それとも今まで歩いたことのないナニカ?」「さぁ」
「分から
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