扉/草野大悟2
そ、ノミ」
赤が歩き始めた。
青も。
緑も歩いている。
どこへ行くのかは、あえて問うまい。
彼らは、彼らの中の声のままに、声に従って歩く。その声は、私たちには聞こえない。
聞こうとも思わない。
耳に馴染みすぎた声。
あっ。星が流れた。
大きな黄と赤紫が抱き合ってる。空色が、ぽつん、という音たてて佇んでる。寂しそう、空色。
空色は、いつだって、どんな時代だって寂しい。そう決まっている。それが、空色の空色たる所以だ。それは、ひとつの定理だ。君やあなたが納得しようがしまいが、それは、定理なのです。
光がいない、ということは、予想以上に遙かに厳しく、影ま
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