扉/草野大悟2
 
け出すことなど限りなく不可能。そんなことは分かっているんだ。言われなくても、分かっている。
 もう夜も遅い。それに、私たちは裸だ。シュラフにくるまれたまま歩け、というのか。無理な相談だ。私たちはなにも好きこのんでここでこうしてシュラフに包まれているわけではない。目が覚めたら、いつのまにか裸で抱き合っていた。
「ねえ……」
「ん?」
「赤や青や緑もいるかな?」
「そりゃあいるだろうよ。黄や赤紫や空色だっているかもしれない」
「かもしれない、なんて、ずいぶんいい加減だね」
「そう、いい加減だね」
色のない世界は、音を包み込み、溶かしさる。溶かされた音は、行き場を失い、ただ曖昧な笑い
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