しおくみざか/れつら
た。
―わたしの郷里にある汐汲峠、もっとも小さい頃はしおくみざか、とよんでいたのだがそれは、思い出された。手水を持っては浜から上がる衣擦れの重さ。
しおくみざか
自転車で
峠からそろりと、ブレーキを
離しながら降りていたことを
うねるように山肌を切る道を
おもいかえしながら
見ていた
坂を登るひとを、幾人か
そぞろに花や、塩や、お手水や
それぞれの荷物を、それぞれにかかえて
歩く人を
いつだったか、トラックで下りながら
まだ若い祖父が言ったのには
ずうっとこの坂道をな、売りもん持って歩いたんや、
海から、街へ
街から、海へ
街、のこともしら
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