しおくみざか/れつら
それで、
雪が降ると。
山口の人は、はしゃぐ。
福井の人は、溜息をつく。
福島の人は、目を細めて。なにか、思い出すように。
―3月10日。昼過ぎにホテルのロビーで新聞を読んだが。いっこうに頭に入らず参った。macbookを膝に載せた男や、子どもがおもちゃやさん行く、と言っているのすら、何の話をしているのか理解できない。ああ福島に自動車が走っているな、ゲームセンターがあるな、まさかないとでも思っていたのか?
―新聞の、あたらしい連載記事を、一文字ずつ米粒を噛むように読み、それでも意味がわからず、かろうじて、汐見坂という坂を彼らが歩いてはのぼった、という部分にようやく引っかかりを得た。
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