夜間飛行/アマメ庵
まったか。
なら、少しだけ右に方向修正しよう。
いや、まだ修正は必要ないか。
ずるをして、こっそり薄目を開けて、まだ道の中心にいることを確かめる。
金網までは、ちっとも近づいていない。
まだ何歩も歩いてはいないのだ。
もう一度、目を閉じて、歩き始める。
真っ直ぐな道を、真っ直ぐに歩くのだ。
方向を見失はないように、飛行機のように両手を広げる。
目を開けているときは、わからないほどの風が、耳の中でコオコオとなる。
蛙の声は右か。
後ろか。
それとも前か。
どっちだ。
ぼくは、前に進んでいるのか。
いや、少し左に逸れたか。
あと一歩で、田んぼに落ちやしまいか。
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