一人の帰り道/クナリ
 
ずはない

理想的な誰か
偶像的な誰か
いるはずがない

足はどこだ
手のひらは 何をつかんだ

自分を隠してくれるからという理由で
好ましくもないのに体を溶け込ませている闇
その中に入れば
影になれると思っていた
誰にも見つからない夜があると思っていた
けれど本当は
誰もの目に触れて
誰もが通り過ぎていく

足はどこだ
手のひらは 何をつかんだ

どこまで降りていけばいい
ここで求められなくなったら
あとどれだけ降りていけばいい
どこまで降りられる
降るためだけのこの階段はどこまで続いてくれている
もう膝まで
水に漬かっているじゃあないか

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