六月三十一日/飯沼ふるい
 
があって、それを一度だけ、高校の同級生だったMに明かしたことがある 。
大分前から食べる気を無くしていたパスタをフォークに絡ませていた。 足をもがれた節足動物の群れがのたうち回るような、なまめかしい渦が、自らをそう遠くない過去へ誘う。その渦の中心で、Mの哀れみの目尻がちらついている。
人に言わないことそれ自体に、何かを期待していた。薄い皮膜に包まれた、蛹の意思。それが彼だという担保、あるいは自信。しかしそれには共感も必要だった。孤独で自身の硬度を保てるほど強くはなかった。
Mは鼻で笑って仕舞いにした。自ら裂いた皮膜の中身は、重たい粘りの、精液に似た汁でしかなかった。
それ以来、秘密の意味
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