ありうべからざる色彩/佐々宝砂
ばかに大きすぎる足とをもった
異形の生物のようで
空き缶を真上から踏みつけて
うまいこと小さくつぶしたみたいに
Tは小さくつぶれていたのだ
僕は妙に冷静な気分で
携帯電話で警察に連絡した
パトカーから降りてきた警察官に指摘されて
はじめて僕は
自分の胸が吐瀉物で汚れていることに気づいた
僕の吐瀉物は赤にも緑にもみえて
僕はついに失神した
赤と緑。
いや違う。あれは赤でも緑でもない。
あれはこの世の色でない。
ここにあるべき色彩ではない。
フジサンロクオームナク と
あの山の向こうで警察が騒いでいたころ
僕とTは樹海の入口で
奇妙な石を
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(4)