ありうべからざる色彩/佐々宝砂
石を拾った
拳くらいの大きさで金属光沢があり
赤にも緑にもみえた
その石を持ち帰ったのはTだったが
Tは死んだし
僕もそんな石を持っていたくはない
しかし僕の身体は
光の加減で妙な色にみえるのだ
僕の尿も大便も汗も
油膜のようなぎらぎらした
赤でも緑でもない色彩に汚染されて
だから僕は
あの石を
**ダムに放り込んできた
なに水道の味は変わらない
あれは完璧に無味無臭さ
単にすこしばかり違う色がみえるだけだよ
窓のそと白い山のいただきに
ありうべからざる色彩の巨人が立つ
水掻きのある指
歪んだプロポーション
人類にかけらの憐憫も抱かない
両生類のようなあの目
もう じきに
君にもみえるようになるだろう。
参考文献 『魔道書ネクロノミコン』(学研)
ラヴクラフト全集(東京創元社)他
小詩集"Poem room of Arkham house"より
初出・同人誌「ピクニック」第2号
[グループ]
戻る 編 削 Point(4)