怨/草野大悟2
 
今でも憎しみの気持ちを持っている。
8年前おれたちの生活を破壊した医者に。
奴は、手術が失敗する確率は1%
はっきりそう言い切った.
だからおれたちは手術を決めた。
おまえの右前頭葉にできた良性髄膜腫の手術は
この言葉で始まった。

手術が終われば三〇年続けている絵画展を
正月に開催する予定で案内状も送付した。

決戦の日、頑張る
との書き置きを残し
おまえは手術室に消え
それっきり
人間であることを奪われた。

ベッドでの毎日がおまえの毎日になり
胃瘻での食事がおまえの食事となり
手や足がねじ曲がり、あるいは尖足し
喋ることもできなくなった。

医療過
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