怨/草野大悟2
療過誤での訴訟には多くの困難があった。
弁護士が見つからない。
執刀医の大学病院助教の手術の過失を指摘する医者がいない。
だれもが無理だと言った。
金もなかった。
全国大学病院の脳神経外科医の繋がりは極めて狭く
妻になされた手術を「過失あり」と判断する医者はなかった
というよりも
弁護士を通じてしか過失を問うことができず
意見を求めることもできなかった。
妻は
ずっと体操の選手だった
いつも笑顔の素敵な女の子だった。
その妻を身体障害者1級にした大学病院の医者を
おれは絶対に許さないし
おれたちの人生を根こそぎ奪って
平然としている大学病院という組織を
絶対に許さない。
うー、といううなり声が聞こえる
あんなに晴れやかだった
妻の声である。
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